翅音ちゃーん!」

笑顔でギンが駆け寄ってくる。
こんにちは、と笑顔で頭を下げる。

「こんにちは。
 なー、 翅音ちゃん。今夜、ヒマ?」

「はい?今夜ですか?…ヒマというか、まあ空いてますけど?」

ギンの顔が輝く。
きょとんとした顔の 翅音に抱きついた。

「今夜、満月やって!
 一緒に月見、せぇへん!?」

「ほう。
 まさか兄に風流を愛でる心があったとは知らなかったな。」

ギンを 翅音から引き剥がそうと、白哉がギンの肩を力いっぱい掴む。
逆の肩にも手が乗せられた。

「全くだな。
 だが、月見ってのはいい考えじゃねぇか?」

冬獅郎だった。
白哉と同じように力いっぱい引っ張っている。
さすがに隊長二人に引かれ、ギンの体は 翅音から離れた。
間に入るように浮竹が現れた。

「うん、いいねえ。
 俺の療養部屋からきれいに見えるよ?」

「…なんや病気がうつりそうやなー。
 ムッツリ病とか。」

ぽつりと言ったギンに、浮竹は笑顔でみぞおちに激しい突っ込みを入れた。
不意打ちに、ギンもうずくまる。
心配して近寄ろうとした 翅音を邪魔するかのように、修兵と恋次が立ちはだかった。

「そういうことなら、俺、いいトコ知ってるぜ?」

「『月よりダンゴ』ってヤツがか?」

翅音に笑いかける恋次に、修兵が遮るように突っ込む。
なんだかケンカでも始まりそうな雰囲気に、 翅音が慌てて口を開いた。

「それじゃ、皆さんでそこに行ってみましょうか!?」

「えー!ボク、 翅音と二人っきりがええー!!」

ギンが口を尖らせながら言う。
その場にいた全員が顔を見合わせる。

「うむ。誰と見るかは重要なことだ。」「せっかくの月見だからな。」

「やっぱり好きな相手と見たいものだよな。」「そうっすよね。」

「俺もそう思うな。…だから、 翅音?」

「「「「「俺と見ないか?」」」」」

「…え!?」

予想もしなかった展開。
誰か一人と!?
いや、それもだけど、今さらりと好きな相手とか言ってなかった!?
翅音の頭は完全にパニック状態だった。
全員の顔を見る。
真剣な…どことなく下心があるような…でも、強い意思のある瞳。
どうしよう。選べないよ…。

「…そういうことでしたら、ごめんなさい…。
 誰を選んでも、きっと心苦しくて、罪悪感に苛まれると思うんです。
 そんな気持ちじゃ、月もキレイだなんて感じられません。
 だから…本当に、ごめんなさい…。」

翅音の出した結論。
伝えたその顔は、笑顔こそ浮かべていたものの、今にも泣き出しそうだった。
全員が言葉を失い、顔を見合わせる。

「…悪かったよ。変な事言って…。」

「好きなヤツに、そんな顔、させちまうなんてな。」

「すまなかった。困らせるつもりなど、なかった。」

「そうだよな、突然こんなこと言われたって、困るよな。」

「いいさ、今日は皆でってことで…」

「でも 翅音? 翅音が好きなんはホンマやからな?
 いつかでええから、答え、出してな?」

「…ありがとう、ございます。」

いつもと同じ、花開くような笑顔。
皆、胸をなでおろす。
恋次が先導し、皆で月見に向かう。
嬉しそうな 翅音の笑顔。
この笑顔を独占できたら…。
だが今はそこまで望むまい。
望むことで、その笑顔が失われてしまうから。
いつかでいい。いつか、選んでくれたなら。

月を見上げながら、思った。
月は静かに、ただ、輝いていた。








<あとがき>
50000hit御礼夢です。
逆ハー…です。
甘い逆ハー夢にしたかったのに…ロマンチックにしたかったのに…。
まあ、言わせたいこと言わせたので、良しとします。
逆ハーとなると、好きなキャラばかり出してしまいます。
単純なヤツです。
それでは読んでくださって、ありがとうございました。

2005.9.15

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