と飴と雷








「ギンちゃん!!お土産だよ〜」
翅音くん、市丸だったら・・・」
隊長の藍染の言葉は今の彼女には届かない。任務を終えて、戻ってきた途端に一目散に向かう場所。
「ギンちゃんってばぁ〜」
「だぁーやかましい!!」
「あれ、寝てたの?もう、起きてるか寝てるかその目じゃ解らないでしょ!!」
「一言多いんとちゃうか?」
「ねぇ、ねぇ・・・現世にねおもしろいものあったから貰ってきちゃった!」
「・・・また浦原さんからか?」
「それよりね、これなぁーんだ?」
翅音、人の話聞いてるんか?」
「飴なんだって!」
「雨やったら、明日降るらしいで・・・」
「違う!飴」
「だから、雨やろ?」
「僕が口を挟んでもいいかな?」
「「藍染隊長」」
翅音くんが言ってるのは食べる飴、市丸が言ってるのは天気の雨だと想うんだけど違うかい?」
「「そう、それ!!」」
二人が顔を見合わせるとどちらかもらもなく笑みを零していた。
「けど、発音は難しいな」
「そうでもないよ。私も、昔は『雨と飴』って発音の区別がつかなくて・・・苦労したもん」
「そうか、でも 翅音やったらボクは許しちゃうな」
「何それ?」
「可愛いからに決まってるやないか!」
「もう〜ギンちゃんったら、コレ全部あげる」
「ええの?」
「うん、頑張ってね」
「へっ?」
ギンの目の前には大量の書類が運び込まれていた。 翅音の手にはしっかりと飴の入った袋が握られている。
「目が開いてないの?」
「開いてる!!ってか、なんで書類なんや?!」
「誰も『飴』あげるって言ってないよ。ただ、これなんだって言っただけ〜」
こんなやりとりは日常の一部であるから誰も気にはしない。一人、 翅音に遊ばれるギンだけは面白くない。
「何、食べようかな〜。これ、オレンジって言ってたっけ・・・」
一つ、口の中に入れた瞬間のことでした。どーんとギンの顔が目の前にあったと同時に唇を塞がれた。
そして、一瞬にして唇が離れると 翅音の口の中の異変に気が付いた。
「・・・・・・」
「不思議な味やな」
「あ〜なんてことすんの!!私の飴が・・・」
「ええやん、素直にくれない奴が悪いんとちゃう?」
「それそっか!で、味はどう?」
翅音は?」
「味わうこともなく、奪われたんだから・・・聞かないでよ!!」
「怒ったん?」
無言で大量の書類を運ぶ 翅音、自然と目で追うとギンの席に運ばれていた。
「何すんのや?!」
「・・・ギンちゃんが処理しなきゃいけない書類って全部、私のとこにあるのは間違ってるからね!」
「でもそれって、 翅音が手伝ってくれるってゆうたやん?!」
「聞こえない」
翅音〜」
「解ったわよ!!」
と言いつつ、 翅音は再び書類を運ぶ。どんと二つ、三つの山が出来上がっていた。
「なんてことしてんのや!!」
「自分で処理して下さいね。市丸副隊長殿」
ニコッと笑みを零す 翅音は、笑ってるのだが眉間に皺がよっていた。
「藍染隊長、どないしよ」
「僕は何もしてないから、自分でなんとかするべきじゃないかね」
「・・・終わりませんよ」
翅音くんに手伝わせた市丸が悪いからね・・・そもそも、飴を奪ったのが一番の原因だろうね」
「そうやった!?今日はアカンな・・・」
と渋々諦めて、苦手な書類とにらっめこを始めたギン。一方、 翅音は違う味の飴を口に入れていた。
「これは美味しい」
翅音さん、この書類をお願いします」
「どれ〜」
「こ、これです」
「それ、ギンちゃんのでしょ!あっちに持って行きなよ」
「えっ、あ・・・すいませんでした!!」
恐怖に怯えながら、大量の書類を再びギンの元へ戻す。その光景を目にした 翅音の怒りは爆発寸前。
「堪忍してや〜」
「やかましんじゃ!!」
その日、 翅音の怒声が途切れることはなかったらしい。





 なんとか、一緒に帰ってきた二人。寝室で寛いでる 翅音はそっぽ向いただがコロコロと音が響いていた。
湯上りのギンはタオルで髪を拭きながら、本を読み飴を舐めているであろう 翅音に声を掛けた。
翅音・・・まだ怒ってるん?」
「そうじゃないけど・・・」
「せやったら、飴頂戴」
「ん!」
本を閉じて隣に座ったギンに向けて舌の上に載せた飴玉が一つ。ギンは一瞬、躊躇う。




これはもしや・・・食べてええってことなんかな?
間違ったら、後が怖いしな・・・どないしたらええんや?

素直に聞いた方が良さそうやな




翅音、それ食べてええってこと?ええなら、動かんとき!」
じっと見つめてると 翅音は微動たに動かなかった、そしてそのまま飴玉ごと口で塞ぐとお互いの口の中で行き来する。
漸く解放された時には綺麗に形がなくなり、飴の味だけが残っていた。
「ギンちゃん・・・」
「一段と甘くなったんとちゃう?」
「そうだね」
翅音、まだ残ってるんか?」
「もうあげないよ」
「ちゃんと冷蔵庫の中に入れといたんか?」
「あ!忘れてた・・・」
流れで抱き締めたかったギンの両腕をすり抜けて 翅音はキッチンへと消えていく。
「なんでこうなるんやろか?空もどんよりと曇って来たし・・・アカンな」
「ギンちゃん、雨降ってきたよ」
「飴なら、もう入らんで・・・って違う。ホンマ、降ってきたんか?」
「プッ!ギンちゃんったら・・・」
「笑うんやない!」
「だってぇ、可愛い〜」
そう言って、 翅音の手はギンのタオルを取り髪の毛をぐしゃぐしゃと掻き回した。
「な、何すんのや〜」
「可愛いから〜」
「あんな」
「もうダメ!何言ってもダメだよ〜」
「散々な日やな」
「なんでかな?」
「雨と飴のせいや!」
「食べる飴と空から降ってくる雨ね、そう言われて見ればそうかも・・・」
その時、空がピカッと光ゴロゴロと物凄い音が響いた。
「ぎゃあー!!」
「おっ?!」
開けっ放しの襖から見える、青光の閃光にギンはニヤッと笑みを零す。ザーっと音と共に雨が降り注ぎ、ゴロゴロと雷の音が響く。
「こりゃ、凄いな」
「・・・・・・」
翅音、見てみん。また光ったで!」
「うぎゃあー」
「な、なんや?」
雷の音と共に、家の中からの悲鳴とも言える絶叫にギンは振り返ると部屋の隅っこに両肩を抱えガタガタと震える 翅音の姿があった。
翅音、雷・・・怖いん?」
「ぎゃあ〜!!ぎゃあ!」
「色気ない悲鳴やな・・・」
「莫迦!?うぎゃあ!!」
襖を閉めて、 翅音を優しく包み込み胸に頭を寄せるようにぎゅっと力強く抱き締めたギン。
「ギ、ギン?」
「これやったら、怖くないやろ?」
「で、でも・・・」
顔を上げようとしても上がらない。それよりも、両耳に雷の音が響いてこない。
何かに圧迫されているかのようにギンの声も聞き取り辛い。
「収まったな・・・。もう大丈夫やで・・・ 翅音・・・?」
「・・・・・・」
「寝てしもうたんか・・・」
ギンの腕と胸に遮られた雷の音。彼の心臓の音が子守唄となり、 翅音を安眠の世界へ誘ったのだった。
「せや、この隙に一個くらい食べてもバレへんやろ?」
翅音をそっと布団に寝かせると忍足でキッチンへと向かうギン。目的の飴玉を見つけると一個無造作に取り出し、口の中に甘い味で広がった。
暫くして、自分用とこっそり分別して隠したギン。そして、そのまま 翅音が寝ている布団の中に身を潜めた。



 翌日、ギンは 翅音に体当たりされて起こされた。
「大変、大変だよ!!ギン、起きて〜!!」
「あぅ!?」
「・・・私の飴がなくなってるの!!」
「飴?雨?・・・まだその話か・・・ええ加減にせんと・・・ 翅音のこと食べるで〜」
「この莫迦ギンが?!」
「元気やな〜」
身の危険に素早く身体を離した 翅音だった。その姿に肩をがっくりと落としたギンだったが、 翅音の手に握られている袋に気が付いた。
「・・・ 翅音、手に持ってるそれはなんや?」
「手に持ってる?・・・何これ!」
「・・・・・・」
「あ、飴だ!」
「で?」
「ご、ごめん・・・。お詫びにあとで一個あげるから・・・」
「ボクはええよ。 翅音の分、なくなったらでまたいややからな」
「うわぁ、酷い!」
「酷いのはどっちや?体当たりするわ、人に疑いするわで・・・朝からはた迷惑な話や」
「ごめんってばぁ〜」
「ボクは今日は行かへん!!」
「機嫌直してよ・・・」
「・・・・・・」
「ギンちゃん、どうした許してくれる?」
不貞寝と言わんばかりに布団の中に潜ったギンはのそのそと顔を出した。
「お目覚めの・・・」
「いいよ」
チュッと音を立てて、ギンの唇に自分の唇を重ねた。だが、それで収まらないのはギン。
翅音・・・見えてるんやけどな。誘ってんの?」
「・・・莫迦!!」
「冗談や。今夜の楽しみにしとくからな〜」
「もう〜全部書類終わらせたら好きなだけいいよ」
「ホンマやな?」
「あと、ギンが食べたり隠した飴のことは水に流してあげるからね!」
「・・・そうかって・・・バレてたんか?」
「当たり前!ちゃんと数は数えてたもん」
「せやったら、さっきのはなんなんや?!」
「さぁ、知らない!」
翅音〜」
その日、ギンは何がなんでも山積の書類を終わらせようと必死。その隣で上機嫌の 翅音と対照的な二人。
時折、さり気なく 翅音も手伝い二人仲良く仕事する姿が見受けられたのでありました。





















5万打企画・第一位「市丸ギン」作品・著  :ユリヤ FROM : Ginzya




ここから↓はHP掲載時に、削除して構いませんからね!

あとがき
甘々モード全開とはなってないかもしれませんが、楽しんで頂けたのなら幸いです!

5万打企画・第一位のギン夢・甘々・・・。お持ち帰り掲載日から一ヶ月です。
7/17〜8/17までとなりますのでご注意くださいね。尚、お持ち帰りした方は一言頂けると嬉しいです。


2005/07/17 


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