準備を終えたボクが、キミの部屋をノックする。

そっとドアを開けると花の香りと一緒に差し込むお天道様の光の中、

キミの純白のドレスに長い長いヴェールの後姿がなんや凛としててボクの瞳に映る・・・

ゆっくりとボクを振り返ったキミは、今までで見た中で一番綺麗で。

ふんわりと微笑んだキミは、もうボクだけのモンやてめっちゃ嬉しかった・・・

 

 

Marry Me

 

 

「・・・でも式は12時からだからまだ平気だって。」

私の不安を取り去ろうと乱菊さんが私に化粧を施しながらニッコリと笑う。私の顔はドンドン華やかに変わっていく。

リハーサルメイクの時にはとっても濃かった乱菊さんの化粧も、今はナチュラルメイクに毛が生えたようなものまで落ち着いていた。とは言え主役は花

嫁である私だからとパーツパーツをしっかりと目立たせていて。本物のプロのメイクさん並みに素敵に仕上がっていく。

「乱菊さんて本当にお化粧上手ですねぇ・・・尊敬しちゃいます」

「だって 翅音ちゃんの為にとっても勉強したんだもん・・・ギンはあんなやつだけどさ、私は 翅音ちゃんが大好きだし幸せになれる事を本当に応援し

てるんからね・・!」

そう言ってウィンクして見せる乱菊さん。

そんな彼女の今日の格好は薄い紫色のシンプルだけど綺麗なパーティドレス。いつもよりも控えめなそのドレスに私への想いが篭っているようで。

それでもとてもよく似合っているから乱菊さんは何でも似合うナイスバディなんだなぁと私はまたしても感心してしまう。いつもは降ろしている髪の毛

もスッキリと纏め上げられておりとっても綺麗だ。

「ギンを・・・ううん。ギンと一緒に幸せになってね」

「・・・有り難う御座います。乱菊さん」

その時ドアをノックする音と日番谷隊長の声がした。

「市丸の野郎に今地獄蝶送っておいたからな・・・チッ!あいつ一体何してやがるんだ・・!」

「あはは。ギンの事だからまだ寝てたりしてね〜!隊長・・・あんまり遅かったら直接迎えに行って来て下さいな」

準備中だからドアが開けられる事は無くドア越しでの会話になる。乱菊さんが笑いながらそういう。昨日は別々に過ごす事にした私達・・・今考え

れば一緒に過ごして起こしてあげれば良かったかも知れない。ギンの寝起きは最低と言う言葉が相応しい位悪い。

「何で俺がそんな事まで・・!」

「す、すみません・・・日番谷隊長」

私が謝るとすぐに返答が帰ってくる。

「 風花が謝る事じゃねぇ・・!アイツの不摂生が駄目なんだ。よりによって今日は無いだろ・・・」

そう言ってドア越しでも聞えるような大きな溜息を吐いて

「 風花・・・兎に角市丸の事は俺に任せてお前は、幸せになる事だけ考えてろ・・・」

そう言ってドアから遠ざかる日番谷隊長。乱菊さんは笑いながら

「隊長、カッコイーイv今朝だって面白かったのよ?朝一番に地獄蝶が飛んできて、格好悪くないかチェックしやがれ。だよ・・?隊長が 翅音ちゃん

の結婚相手じゃないのにね♪」

「あはは、でも何だかとても嬉しいです・・・」

私が俯くと顎に手をかけ上に持ち上げる。

「ホラホラ・・・泣きそうな顔しない♪でも・・・相手のギンがそんなのだったら気持ち悪くない?」

「そうですね・・・」

乱菊さんは「うんうん。気持ち悪いよ」と言って吹き出したから私も一緒になって笑った。笑っている半面心の中では、ギンは来てくれるのだろうか

・・・少し心配だった。

 

 

 

 

 

 


ボクはボーと周りを見渡す。薄暗い室内。そして肌襦袢が少し肌蹴ているボクの胸板、タキシードを着ていない。

手を見るとボクのごつごつした手・・・隣にはいつも居る筈の 翅音ちゃんの姿は無く別々に過ごした事を思い出した。暫くボーとして覚醒するのを待

つ。

どうやらさっきのは夢やったみたいやと漸く気が着く・・・それにしてもやけに現実味を帯びとる夢やったなぁ・・・

まぁ其れもその筈今日は、待ち望んだ 翅音ちゃんとの結婚式・・・そう思ってボクは起き上がり襖を開ける。ええ天気やなぁ・・・結婚式にはめちゃ


めちゃええ感じのお天気や。まるでボク等をお天道様まで祝福してくれてはるみたいやね・・・ 翅音ちゃん。

襖を開けた瞬間にボクに向かって一直線に飛んでくる地獄蝶が目に入る。

『あァ・・・十番隊長さん、まだ何かボクに言いたい事あるんかいな・・・』

溜息を吐いて指を差し伸べる。スッと指に止まった地獄蝶からは十番隊長さんの大音量の怒鳴り声がしたから嫌でも目が覚めた。

「市丸!!テメェ今一体何処に居るんだ! 風花はもうとっくに準備してるぞ!」

想像していなかった事を言われて思わず吹き出す。だって・・・十番隊長さんらしくなかったから。普段は素気なくてぶっきら棒やのに、なんや余裕

感じひんなぁ・・・十番隊長さんせっかちやし。なんや呑気やなぁ・・・ボクは聞き流そうとしたけど次の言葉で今ボクが置かれている状況をやっと掴む

「其れにお前今何時だと思ってやがる!馬鹿野郎! 風花を不安がらせるんじゃねぇ!さっさと来やがれ!分かったな!?」

そうボクに伝えると直ぐに十番隊長さんの元にUターンしていく地獄蝶。

今何時て・・・ボクは部屋に戻り時計を見てビックリした。

『待って・・・確か 翅音ちゃんと10時に待ち合わせしてなかったっけ・・?今10時45分やぞ・・・』

ね、寝坊してもた〜!!遅刻どころや無い・・・下手したら 翅音ちゃんに嫌われてまう。しかも今日は大事な式の日やないの!!な、なんて事し

てもうたんや!ボク!!ボクは顔も洗わず慌てて死覇装を着て羽織を羽織慌てて部屋から出ようとして慌てて洗面所に引き返す。あァ・・・どない

しよ。鏡を見たらボクの髪の毛はいつも以上に寝癖がついていてピンピン跳ねていた・・・

『あァ・・・ 翅音ちゃんが居らんかったら急にこないな事になってまうなぁ・・・』

我ながら 翅音ちゃんが居てくれるお陰で何時の間にか頼っていた部分も有ったみたいで・・・いざ 翅音ちゃんが居らんかったら何にも出来ひんボク

が居って。なんや、ちょっと情けない様な。それでいて案外ボクは 翅音ちゃんに気ぃ許しててんね。と安心してまう。このまま気を許してしまって、 翅

音ちゃんの傍だけでは落ち着きたい・・・

『兎に角此れを直そうと思うたら風呂入らんとアカンなぁ・・・』

ボクは風呂場に入って髪の毛を洗い始めた。

 

 

 

 

 

 


一体何してやがるんだ・・!市丸の野郎・・!

地獄蝶もすぐ俺の元に戻ってきたし、伝令は伝わっているはずだ・・!もう11時だぞ・・・俺はイライラしながら 風花の部屋の前を行ったり来たりして

いた。 風花は松本と一緒に式の準備をしている。

何があっても 風花がこれ以上不安な気持ちを募らせたら俺がお前を許さねぇぞ・・!市丸・・・ふと其処まで思って何故自分がそこまで 風花と市

丸に執着するのか疑問に思う。確かに 風花は十番隊の隊員であるが・・・それだけではない筈・・!それはきっと 風花もそして市丸も俺と同じ流

魂街からの出身で気持ちが分かるから・・・

それだけじゃねぇ。何だかんだ言って市丸と 風花が仲睦まじくしているのを見て何時の間にか癒されている俺が居た・・?ハッ・・・そんな訳ねぇか・・・

そんな時、吉良が一番隊までやって来た。手には何だか大きな包みを持っていた。

「吉良・・!市丸は一緒じゃねぇのかよ!?」

「市丸隊長ですか?今日は一緒じゃありませんよ。どうかなさったのですか?」

怪訝そうな顔をしている吉良に俺は溜息を吐き、 風花に聞えないように小声で話した。

「市丸の野郎・・・まだ来てねぇんだよ」

「え!?あんなに楽しみにしていた市丸隊長が?寝坊でもしたのでは?」

自分の発言に納得したのか吉良はうんうんと頷き、「そうに違いない」と言っている。

「兎に角吉良・・・早速ですまねぇが、市丸の野郎を探すのを手伝ってくれ。俺も探す。」

「え・・・今日位はゆっくりさせて頂きたいのですが」

ウンザリと言った表情で吉良は溜息を吐く

「俺だってゆっくりしたいぜ・・・だけどな、幾ら男だって準備に多少時間はかかる筈だ・・・」

「だったら市丸隊長きっと寝坊ですから家に行かれたら一番早いですよ。僕 翅音さんにブーケ作る役で、渡さないと行けないんで失礼します」

そう言ってニッコリ笑って 風花が居る部屋の方へ歩いていってしまった。手に持っていたのはブーケだったのか・・・

吉良・・・それでも三番隊の副官かよ・・!

「結局俺が行くのが一番早いか・・!」

俺は舌打ちして仕方なく自ら市丸の家に向かった。

向かっている途中何故俺がこんな事をしなくてはならないんだと何度も思いながら。一分一秒惜しい俺は瞬歩で向かう。

市丸の家のドアを勢い良く開けて叫ぶ。家の中に確かに市丸の気配が有った。

「市丸っ!!テメェ何してやがる!」

俺が叫んでドンドンと大きな足音を立てて市丸の霊圧に近付く。脱衣所の前でガラッと勢い良く扉が開き髪の毛から水滴を滴らせた市丸が顔を

出した。

『十番隊長さんやないの・・・』

「何が十番隊長さんやないの。だ!!急げ!」

俺は何とか死覇装を着込んだ市丸の頭に当たる様にドライヤーを吹き付ける。クツクツと前から笑う声がして、

『十番隊長さん・・・ドライヤーの温風ボクの髪の毛まで届いてへんで・・・』

「・・・五月蝿いっ!式場で準備するぞ!」

市丸の態度に心底腹が立ったが時間を見るともう11時15分を回っていた。時間に余裕が無いので髪はまだ乾いてなかったが市丸の手を引っ

張り強引に家を出て走る。

『十番隊長さん・・・えらい気合入ってるなぁ・・・』

「テメェが緊張感無さ過ぎだ!其れでも今日から 風花の夫としての自覚あんのか!!」

俺は後ろに居るで有ろう市丸にも聞えるように大声で叫ぶ。暫くして、小声で

『・・・おおきに。十番隊長さん・・・ちょっと本気で急ぐわ』

そう言うと市丸が前に出て瞬歩を応用して一気に歩を進める。

・・・やれば出来るじゃねぇか・・・俺は少し安心してその後に続いた。

 

 

 

 

 

 


ボクが一番隊の隊舎前に着いた時には、ボクと 翅音ちゃんの結婚式に参列する沢山の死神達が居て・・・そして結婚式用にと綺麗に飾られた

一番隊。参列者がボクの姿を見つけて騒ぎ出す。あァ、恥ずかしいなぁ・・・

「恥ずかしいと思うのならばさっさと入りやがれ!」

ボクの気持ちを察してか、背中を押しながら十番隊長さんがそういう。 翅音ちゃんの部屋の隣がボクの控え室みたいで控え室の前に居たイヅル

が大声で叫ぶ!

「市丸隊長・・!貴方一体今何時だと思ってるんです・・!早く入って下さい。あと40分しかないんですよ!」

「ずっとここで待ってた癖に偉そうな口を聞くもんだな・・・吉良」

十番隊長さんがイヅルを睨み上げはるけど、どういう意味か分からんボクはポツンと立ち尽くす。 翅音ちゃんの部屋から顔を出した乱菊が

「ギーーーーン!あんたまだ髪の毛濡れてるじゃないの!?それにそれ死覇装!?早く着替えなさい!・・・ 翅音ちゃん!ギン今来たよ!ちゃんと

来たから安心して」

部屋の中に居る 翅音ちゃんの声がするけど何ゆうてはるんか全然わからん。 翅音ちゃんに嫌われてもうたやろうか・・・泣かしてしもうたやろうか

・・・そう思ったと同時に口から

『乱菊・・・ 翅音ちゃんと逢わしてくれへん・・?』

「は?駄目よ。まだ準備中なんだから・・・」

乱菊がそう言うと後ろから声がする。乱菊が溜息を吐き

「ドア越しで良ければって言ってるよ。ギン・・・あんた準備もあるんだから3分だけよ?」

そう言って乱菊が部屋から出て、イヅルや十番隊長さんもその場を後にしようと踵を返す。

すれ違いざまに乱菊がボクにだけ聞える様に

「 翅音ちゃんに謝っておきなよ・・・」

そう小声で言って立ち去ってしまった。ボクは 翅音ちゃんの部屋のドアに凭れ掛かりそっと言葉を掛ける。

『 翅音ちゃん・・・』

「ギン・・・」

お互い名前を呼び合って暫く黙り込む。ドア一枚挟んだだけでこない離れてる様な気がするんやな。このドアの所為で 翅音ちゃんの温もりすら感

じひんわ。せやけど・・・きっとこのドアの向こうの 翅音ちゃんは、ボクが夢で見た 翅音ちゃんよりもずっとずっと綺麗なんやろうな・・・早く観たいわぁと

思う反面、ボクはまだ死覇装やのに・・・

そう思うたらホンマ情けないわ。

「寝坊したの・・?」

『・・・あァ、うん。そうや・・・』

ドアの向こうから少し震えた 翅音ちゃんの声がする。部屋の前にある時計を見ると11時25分になっていた。

単に遅うなったと言うだけでは済まへん様な時間になってる。

「ちょっと心配しちゃった・・・」

震えた声をわざと明るくする様にそう言った 翅音ちゃんが痛々しい。ボクの所為やね。ボクはそっと口を開いて

『ボク・・・キミが居らんと何も出来ひんみたいや・・・いつの間にか情けのうなってもうたわ』

ドアの向こうの 翅音ちゃんからは何の返事もない。こんな時やけど、ボクがこう言ったら 翅音ちゃんが絶対許してくれはる・・・そんな言葉を紡ぎだす

。この気持ちは嘘やないよ・・・

『愛してるで・・・ 翅音ちゃん。こんなドア越しやのうて早う逢いたい・・・』

「ギン・・・」

翅音ちゃんがボクの名前を呼んだ時に乱菊達が帰ってきた。

「ギン。もういいでしょ?あんたも早く準備しないと、本当に間に合わないわよ」

『 翅音ちゃん・・・後でな』

ボクはそう言って 翅音ちゃんが居るであろう所に手を重ねる。何となく・・・ 翅音ちゃんの温もりを感じた様な気がして・・・なんやちょっと安心しても

うて。自分の控え室のドアに手を掛ける。乱菊が十番隊長さんとイヅルに

「それじゃあ隊長、吉良・・・ギンは宜しくね。私も終わったらすぐに行くから・・・」

え・・・ボクのメイクさんはこの二人かいな!?そ、そんな・・・イヅルは地味やし、十番隊長さんはあの通り髪の毛ツンツンやないの・・!ボクそんなツ

ンツン頭なりたない・・!其れ位やったら全部自分で・・!せやけど流石にそこまで時間は残っていない。せめて乱菊がして・・!

『ら、乱菊が来るまでボクがしながら待っててええ?』

ボクが乱菊に縋り付くように尋ねると途端に嫌そうな顔をするイヅルと十番隊長さん。

「何だよ・・・俺達の手伝いじゃ不満だって事か?」

「僕達一生懸命市丸隊長のお手伝いをしようとしているのに・・・何て酷い事を言うんですか!?」

不満そうな顔をして言う二人に笑い転げる乱菊。

「あははははは。ギン・・! 翅音ちゃんはもう直ぐ終わるから着替えたり髪の毛乾かしたりしておいて!」

『おおきに』

そう言ってボクは自分の控え室に一歩足を踏み入れると

「高級みたらし団子3ケースで♪」

乱菊がそう言ってボクの返事を待たずに素早く 翅音ちゃんの部屋に入ってしまう。有無を言わさず買うたらなアカンねんね?ボクは溜息を吐いて

控え室に入るとマネキンがボクのタキシードを着ていた。後に続いて入ってきたイヅルが丁寧にマネキンからタキシードを脱がせている。十番隊長さ

んが呆れた顔をしてボクに椅子を指差し目で座れと言っている。手にはドライヤーががっしりと掴まれていた。

「普通に乾かすだけだっ!早く座りやがれ・・!」

ボクが座ると丁寧にドライヤーで丁寧に乾かし始める十番隊長さん。

最近は男でも化粧をするらしい。ボクは色が白いから殆どする事は無いけど・・・自分で出来る程度に薄く塗る。イヅルがタキシードを持ってきたか

らボクは死覇装を脱ぎ袖を通す。

「市丸って背丈の割には痩せてるんだな」

「市丸隊長は幾ら食べても太らないんですよ」

ふぅんと言ってボクを見上げる十番隊長さんをボクは無視して急いで着込む。何とか着込んだ頃、ドアをノックする音が聞える。

「誰だ・・!入れ・・!」

「隊長・・・いつもと一緒ですね。入りますよ・・・」

笑いながら乱菊が入ってくる。入ってくるなりボクの周りをゆっくり一周して上から下まで良く見ている。

『 翅音ちゃんは今一人・・?』

「桃ちゃんが来てくれたわ」

そう言ってボクの猫背を指摘してタキシードの上着に入り込んでいたカッターの襟をビッと引っ張り上げる。

「普通に着たらこうなっちゃうのよねぇ・・・ギン。式の間だけでもいいから背筋伸ばしなさいよ?」

『乱菊・・・ 翅音ちゃん綺麗やった・・?』

ボクが背筋を正してタキシードの襟を整えて乱菊に尋ねると

「それは逢うまでのお楽しみ♪ってギン・・!足元が草履のままよ!」

『うわ・・・』

乱菊が鋭くチェックする。ボクは椅子に座って慌てて履き直している間にボクの髪の毛にスプレーを付けて丁寧に梳かしつけてボクの髪の毛を更に

サラサラにしてはる。ボクの自慢の銀髪がサラサラとそしてツヤツヤと光沢を放っている。

「松本・・・すごくサラサラになるんだな。それ・・・」

感心したように十番隊長さんが腕を組みながら乱菊にそういう。イヅルがサラサラになったボクの髪の毛を掴んで感心してはる。

『ボクは見せもんやないよ・・・』

嫌そうにボクが答えると乱菊が声を立てて笑った

「ギン・・・残念だけど今日は、 翅音ちゃんとあんた二人が主役なんだから見せもんだよ」

「・・・幸せな所一杯見せ付けてやれ」

そう言って目を逸らす十番隊長さん。耳が赤くなってはるからちょっと照れてはる・・・十番隊長さんらしくなくボクと 翅音ちゃんを祝福してくれてはる

んやね・・・ボクは自然と笑みが深くなる。

そんなボクを他所に乱菊が黄色い声を上げる

「きゃ〜!隊長男前っ!今うっかり惚れちゃいそうになっちゃいましたよ♪」

「心にも無い事言うな・・・松本」

うんざりとした表情で十番隊長が溜息混じりにそう言う。その隣で固まってたイヅルが恐る恐る口を開く。

「日番谷隊長が、こんな事仰る方だと思いませんでした・・・」

「・・・五月蝿い」

キャーキャー騒ぐ乱菊と狐に摘ままれた様な顔をして呆然と十番隊長さんを見詰めるイヅル。十番隊長さんは眉間に皺を寄せて大きな溜息を

吐いてはる。

ボクと 翅音ちゃんは・・・皆にこんなに祝福されてるんやね・・・ボク・・・キミと逢えてホンマに良かった。

最初は赤い糸なんか全然信用してへんかったもん・・・ボクにも付いてるやなんて・・・ボクが 翅音ちゃんをこんなに好きになるやなんて、 翅音ちゃ

んがボクを愛してくれるなんて何処の誰が想像出来た?ボクかて分からんかったもん・・・

これからは、二人で同じもんを食べて同じものを見て・・・思いを馳せるボクを粉砕する様に慌しく

「ギン・・!出来たわよ!式まであと三分しかないわ・・!ホラ・・・」

そう言ってそそくさとボクから離れて部屋を出て行く一行。ボクは慌てて後を追いかける。外に出た所で

「それじゃ私達は先に行ってるから、また後でね・・!お幸せに・・!」

「市丸隊長は 翅音さんと一緒に来て下さいね。」

「フンッ・・!せいぜい格好悪い所だけは見せるなよ」

『・・・おおきに・・・』

ボクに一言残すと踵を返して立ち去ってしまった。ボクは 翅音ちゃんの部屋のノブに手を掛け一気に開ける。

部屋の中には五番副隊長さんの姿も無く、純白のドレスに包まれた 翅音ちゃんの後姿・・・後ろに丸く長いウエディングドレスがめっちゃ綺麗で。

ボクの胸がトクンと高鳴り、そこだけが時間が止まったようにゆっくり流れていた。

『 翅音ちゃん・・・綺麗やで・・・』

ボクは横に立ち 翅音ちゃんを見詰める。頬を桜色に染めた 翅音ちゃんも顔を上げてボクを見詰めてはる・・・

この長いヴェールが 翅音ちゃんの顔を少し隠してもうてるけど、ヴェールの中の 翅音ちゃんはめっちゃ綺麗で。

引き立てる様に髪の毛には花が、そして耳には可愛らしいイヤリング。首元にはダイヤが散りばめられたネックレスが虹色に光っている。手には指輪

はまだしていないものの薄手のシルクの手袋をはめている。

「ギン・・・」

ボクの名前を呼んでそっと抱きついてくる 翅音ちゃんをボクも抱きしめ返して

『 翅音ちゃん・・・キスしたいわ・・・』

「私も・・・ギン・・・タキシード良く似合ってるね」

そう言ってボクを見上げて笑う 翅音ちゃんはいつもの 翅音ちゃんよりもずっと綺麗に見えて・・・

『 翅音ちゃんも・・・やっぱりよう似合うてはる・・・流石ボクのお嫁さんやね・・・』

そう言って 翅音ちゃんの手を取って彼女のドレスを気遣いながらゆっくりと部屋の外へ出る。

「あっ・・・」

翅音ちゃんがドレスの裾を踏みこけそうになりはったから慌ててボクが支える。

ズシッと重くて、ボクは初めてウエディングドレスの重さに気がついた。

『 翅音ちゃん・・・しんどない?歩くの辛いやろ・・?』

不幸中の幸いボクのタキシードは軽くてまだ動き易い・・・猫背は治さな格好悪いらしいけど。ボクはひょいっと翅音ちゃんをお姫様抱っこして颯爽

と目的地まで向かう。

「ギ、ギン・・・恥ずかしいから・・・」

焦った 翅音ちゃんが真っ赤な顔をしてボクを見上げるけどボクは無視して、一歩一歩噛み締めるように歩を進めた。

 

 

 

 

 

 


は、恥ずかしい・・!気は付けていたけどやっぱりウエディングドレスの重さと、窮屈さに耐え切れず裾を踏みつけてしまって転びそうになってしまった

・・!そんな私をしっかりと支えたギンは、一瞬驚いた顔をして私を見た。

『 翅音ちゃん・・・しんどない?歩くの辛いやろ・・?』

心配そうな顔をしたギンが私をお姫様抱っこして颯爽と歩き始める。真っ直ぐ前を見るギンの横顔に今更ながら胸が高鳴り心臓がバクバクしてい

る。

「ギ、ギン・・・恥ずかしいから・・・」

今の私はドレスを着ていていつもよりもずっと重いし、それ以上に胸の高鳴りが五月蝿くて仕方ない・・!そんな私の願いを無視してギンは颯爽と

歩いていく。幾ら言っても聞き入れてくれないみたいだ・・・

私も諦めて視線をギンと同じ式場のドアに移す。私の髪に活けられた花と同じ花が綺麗にデコレーションされていてとてもじゃないが一番隊とは思

えない。そんな粋な計らいに私は嬉しくなる。見上げればいつもより真剣で、ほんの少しだけ緊張しているギンの顔。そんなギンが可笑しくて笑って

しまう。

『何笑うてはるん・・?』

「ちょっと緊張してる・・?ギン・・・」

私がそう言うとギンは弧を描くように口角を上げクツクツと笑い

『式挙げやんとこのまま 翅音ちゃんだけ攫ってもうてええか?』

私は慌てて首を横にブンブンと振ると、薄っすら開いた緋色の瞳が私を映す。

『今晩覚悟しときや・・・寝かさへんよ』

そう言って前を見据えるギンは、もう緊張も無くいつものギンに戻っていて私は安心した。

皆の居る式場に足を踏み入れる。静かに鳴り響いた音楽に、歓声が上がってヴァージンロードを半分程お姫様抱っこ状態で進んだ後そっと床に

降ろされる。私がギンを見上げるとクツクツ笑いながら

『折角のドレスやないの・・・皆に見せびらかし?』

そう言ってギンは持っていたドレスを後ろにふわりと放り投げる。パサ・・・と音を立てて広がったドレスを見て再び歓声が上がる。私も後ろを振り返っ

て見ると

『 翅音ちゃん・・・』

ギンに呼ばれてギンの方を振り向くとそっと手を差し出すギンの髪の毛がステンドグラス仕様に改造された窓から差し込む太陽の光に反射していて

とても綺麗で、見惚れながら私はおもむろに手を取って歩き出す。

神父さんが総隊長だったのには本当に驚きを隠せず私達だけでなく、参列者までもどよどよと騒ぎ立てた。

総隊長の「ぺいっ」という喝で会場は静まり返ったのは言うまでも無く。

慣れない言葉を発する総隊長に、ギンは不満そうな顔をしてそんなギンを私は見上げて可笑しくてずっと笑っていた。

「それでは・・・誓いのキスを」

たどたどしいがセリフだったが、此処で漸く一区切り着いて会場はシーンと静寂に包まれる。

ギンがニッコリと笑って私のヴェールをそっと上げて

『やっと 翅音ちゃん見れたな・・・好きやで・・・』

「ギン・・・」

そう言って口付け様とするギンに私は瞳を閉じた。ちぅ・・・で終わる予定のキスだったけど私の腰を引き寄せて口付けを落とすギンはホンの少し長

めに口付けた後名残惜しそうに唇を離してペロリと私の唇を舐めた。歓声が上がり、注目を受けて一気に顔が赤くなり俯く私をクツクツ笑って見

下ろすギン。全然緊張した様子もなく私の手を取って指輪をはめて、手が震えながらも私はギンの薬指に指輪をはめる。私は恥ずかしくてずっと

俯いたままで。俯いたまま会場を去ろうとする私に

「 翅音ちゃん!顔上げて・・!勿体ないわよ♪」

「 風花・・・お前。少しは自信持て!」

乱菊さんと日番谷隊長の声が聞こえて其れよりは少し小さな声で

「 翅音さん・・!とっても綺麗ですよっ!お幸せにっ!」

吉良副隊長の声がする。チラリとギンを見上げると満面の笑みで私を見下ろす。ギンがとっても嬉しそうだったから、私も自然と頬が緩み笑顔で出

口の一歩手前まで進んだ。出口の一歩手前でギンと二人振り返り、周りに人だかりが出来る。ギンが見守る中私はブーケを思いっきり投げる。

『ひゃぁ・・・えらい遠くに投げはったなぁ・・・』

ギンがクツクツ笑いながら私に笑いかけると私をまたお姫様抱っこして踵を返す。

ブーケを手にした日番谷隊長が大声で叫ぶ

「何で俺なんだ・・! 風花!待ちやがれぇぇぇ!」

「隊長〜!ずる過ぎます!!」

私達は日番谷隊長の怒鳴り声と悔しがる乱菊さんの声を聞き、笑いながら式場を後にした。

 

 

 


 

 

 

あとがき


いつも御清聴頂き有り難う御座います。

長・・!此れが私の書き上げた直後の感想です(爆)

Marry Me = 結婚しよう  アハ☆最高に甘々展開を期待した私にピッタリな題名です(笑)

Destined soul mate→Bride elect→Marry Meとシリーズ物っぽくなってしまいました(笑)何とか完結、です。

信じられない程白い市丸たいちょですね(爆)幸せに甘々で、ほのぼのと仕上がってますでしょうか?

読者様に少しでも頬を緩めて頂ければ有り難き幸せで御座いますですよ!

ドレスってとっても重いんですよね(汗)私が着たのは何と5キロ以上!重過ぎです・・・

そしてこの夢小説、ギンBD夢お持ち帰り頂けた方と辰水様のみのお持ち帰りで願います。因みに、ギンBD夢はフリーとなっており、配布期間に

指定は御座いません。貰ってあげようではないか!そんな心お優しいお方は是非拍手のコメントか掲示板に報告願います(深々)

読者様達ももし宜しければでいいので感想等頂ければ喜び踊り狂いますv次の糧になりますv

それでは最後まで読んで頂き本当に有り難う御座いました。       05/10/10

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