「十四郎さん、ダルマみたーい!」

翅音は一緒にこたつにあたる浮竹を見て笑った。
袢纏を着込んで、まるまるとしてしまっているのだ。
浮竹は 翅音の言葉に苦笑する。

「そう笑ってくれるなよ。
 俺が寒がりなのはよく知ってるだろう?
 それに、今日はまた一段と寒くないか?」

浮竹の言葉に、 翅音がふと真顔になって外に目を向けた。
驚いたような顔をしながら浮竹に視線を戻す。

「そのはずですよ。
 ほら、雪が降ってきましたよ!」

「何ぃ!?…寒いわけだ。」

情けない顔で浮竹は外を見る。
白い雪が空から舞い落ちる。
この冬、初めて見る雪だ。
そして… 翅音と一緒に雪を見るのも初めてだ。
なんだか胸に込み上げるものを感じ、浮竹は立ち上がった。
そのまま縁側に出る。

「ちょっ…十四郎さん!?
 風邪引きますよ!」

「… 翅音。」

翅音への思いを瞳に宿し、浮竹は 翅音を呼んだ。
その瞳に、その微笑に、その声に、 翅音は思わずドキッとする。
自然と 翅音に笑顔が浮かぶ。
浮竹に手招きされるまま、 翅音も縁側に出る。
ひんやりとした空気が二人を包む。
降り続く雪が二人の上にも舞い降りる。
いつから降っているのだろう、あたりはうっすらと白く覆われていた。
幻想的な光景に、 翅音はため息を吐いた。

「…キレイ。」

「ああ。…すごいな。」

二人はしばし雪景色に見入っていた。
しかし、二人を包む寒さに 翅音がくしゃみをした。
浮竹は慌てたように 翅音に向き直った。

「すまない。寒かったな。」

言いながら、 翅音を抱き寄せる。
浮竹のぬくもりが、 翅音に伝わる。
浮竹のその優しさすら、ぬくもりとして 翅音には感じられた。
寒さなどすっかり忘れ、 翅音は浮竹に頭を預けた。

「…ありがとうございます。
 あったかい…。」

「…そうだな。」

浮竹の顔に優しい笑みが浮かぶ。
腕の中にいる 翅音。
自分に体を預ける 翅音。
愛おしさが込み上げる。
抱きしめる腕に、力をこめる。
翅音のぬくもりが浮竹を包む。
愛しいなんて言葉じゃ足りないくらいに、愛しい。
この想いを、どうしたらいいのだろう。
浮竹は空を見上げる。
変わらずに降り続く雪。
気づくと、 翅音も空を見上げていた。
思わず顔を見合わせ、微笑みあう。
そして、唇を重ねる。
お互いのぬくもりを与え合える寒さをもたらした雪に、感謝しながら。





<あとがき>
皆様のお住まいの地域は、もう初雪は降ったのでしょうか。
寒い日が続きますので、どうぞお体に気をつけてお過ごしくださいませ。
読んでくださって、ありがとうございました。

2005.12.8



SEO [PR] 爆速!無料ブログ 無料ホームページ開設 無料ライブ放送