「眠れない・・・」

全然眠れない。
暫く布団でゴロゴロしていたが、眠くすらならない。
数時間前にカレシが出来たため、おそらく気持ちが昂ぶっているのだろう。
気分を変えようと、障子をあけて風に当たる。

「あ、満月!」

せっかくの満月。
どうせ眠れないなら散歩でもしようと、外に出た。
月を見ながらふらふら歩き始める。
少し歩いたところで、後ろから声をかけられた。

翅音vv」

「あ、市丸隊長!」

「仕事中やないで?
 ギン、呼べ、言うたやろ?」

「そうでした。」

カレシになったのだから名前で呼ぶと、約束したばかりだった。
翅音は舌を出し、微笑む。
かわええなーと、ギンは 翅音を抱きしめ、ほおずりをする。

「こんな夜中に、こんなかわええ子が一人で歩いとると、危ないで?」

「んー、眠れなくて、気分転換に。
 すぐ帰るつもりだったから。」

「眠れへんの?ほんなら、ボクんとこ、来る?
 眠くなるまで、話でもしてよか?」

「でも、それじゃ市丸・・・っと、ギン、迷惑でしょ?」

「迷惑なわけないやんかー。・・・あ、そうや!ボクが、子守唄歌ったるわvv」

うまいでー、と微笑む。
ギンの唄を聞きたかったし、何より傍にいたかったので、 翅音は頷く。

「うん!行く!」

ギンは顔を輝かせ、 翅音を抱き上げる。

「早よ行こ!」

そのまま、瞬歩と見紛う様なスピードで宿舎に向かった。









「ボク、着替えてくるから、待っとって。」

翅音を自分の布団に下ろし、部屋を出て行った。
そのままコロンと横になってみる。
いつもの、ギンの匂い。
嬉しくなって枕を抱きしめる。
そのままゴロゴロしていたら、部屋に入ってきたギンに枕を奪われた。

「ボク以外にそんな風に抱きついたらあかん!」

面白くなさそうに言う。
枕なのに。
そう思うが、やきもちを焼いてくれたことが嬉しくて、ギンに抱きつく。
翅音をそのまま抱きしめ、ギンは布団に倒れこむ。

「大丈夫やvv今日の今日で、ヘンな事はせぇへんよ。」

優しく頭を撫でてくれる。
翅音は安心して、ギンの胸に顔をうずめる。
布団をかけ、ギンは 翅音の耳元で囁いた。

「ほな、ボクの美声、聞かせたるわvv」

頭を撫でながら子守唄を歌い始める。

『可愛い可愛い 私の愛し子
 眠れ眠れ 私の胸に』

柔らかい歌声。
暖かい腕。
優しい手。
落着く匂い。
全てが、 翅音を眠りに誘う。
やがて、ギンの耳に寝息が届く。

愛しい人が、自分の腕の中にいる。
無防備な寝顔で。

「・・・ボク、一晩ガマンできるんかなー・・・」

ため息をついた。
かわいらしい寝息。
柔らかな髪。
白い肌。
ふくよかな口唇。
全てが、ギンを誘惑しているかのようだった。

「これ以上はせぇへんから、許してな。」

愛おしそうに、口唇を重ねる。
照れながら、眠る 翅音を見る。
翅音が微笑んだ。
起きたのかと思い、ギンは驚くが、寝息が聞こえてくる。
眠っている。
恐る恐る、もう一度キスをする。
再び 翅音が微笑んだ。

「あかん・・・可愛すぎや。」

こんな純粋な子に、手なんて出せへんわ。
込み上げる愛しさに、 翅音を抱きしめる。
愛しくて愛しくて、どうしたらいいのか分からない。
ギンは、その術を知らない。
抱きしめる腕に、自然と力がこもる。

「・・・んー・・・」

翅音の寝苦しそうな声が聞こえた。
慌てて腕の力を緩める。
翅音の眉間にしわがよっている。
起こしたんかな?
ギンはちょっと考え、何かを思いついたように笑った。

『可愛い可愛い 私の愛し子
 眠れ眠れ 私の胸に』

翅音の顔が和らぐ。
ギンに身を寄せてくる。
それを受け入れ、ギンは歌い続けた。
愛し子を思う、母のように。
無償の想いで、心を満たし。

愛しい愛しい、 翅音を、胸に抱きながら。








<あとがき>
ギンに子守唄を歌って欲しいと言う、私の願望から生まれた夢です。(笑)
歌ってくれなくてもいいから、添い寝して欲しい。
もちろん、我慢なんてしなくていいのよvv(あほ)
ちなみにこの子守唄の歌詞は、実在のものではありません。
勝手に作りました。
それでは読んでくださって、ありがとうございました!

2005.5.9

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