ダダダダダダダダダダ・・・
けたたましい足音を響かせ、 翅音は日陰へと飛び込んだ。
気配を感じて顔を上げると、ネムの姿があった。

「く、涅副隊長!こんにちは!!
 これは、その・・・大変失礼しました!」

慌てて頭を下げる。
ネムは少し微笑み、口を開いた。

「こんにちは。 風花さん、でしたよね。
 すごい汗ですけど、大丈夫ですか?」

翅音は頭を上げて、ネムの顔を見る。
汗一つかいていない、涼しげな顔。
それを見つめる自分は、滝のような汗が流れ落ちている。
何で!?涅副隊長は暑くないの??
ネムの足元に目が行く。

「あ、そうか・・・。
 涅副隊長、その死覇装、涼しいですか?」

「え?ああ、はい。
  風花さんの死覇装、汗で濡れていますから、替えに一枚お貸ししましょうか。」

「とんでもないです!そんな涅副隊長からお借りするなんてこと・・・!!」

「でも、どちらにしても着替えないとよくありませんし。
 数はあるので、気にしなくても大丈夫ですから。」

涅副隊長、なんてお優しい・・・!!
翅音は涙を流さんばかりに感激する。
しつこくお断りするのも、かえって失礼かな・・・。
それに、何より着てみたい!

「それでは、お言葉に甘えてお借りしてもいいでしょうか?
 あ、キチンと洗って返します!」

「かまいません。では、こちらです。」

ネムに案内されるまま、12番隊隊舎までついて行く。
自分の荷物を置いてある棚から、一枚取り出す。
差し出された死覇装を、 翅音は目を輝かせながら受け取る。

「本当にありがとうございます!」

深々と頭を下げ、ネムにお礼を言う。
ネムはにっこり笑う。

「サイズは合うと思いますから。・・・あ、ごめんなさい、もう行かなくては・・・。」

頭を下げるネムに、 翅音はもう一度頭を下げて見送る。
姿が見えなくなるまで見送ると、死覇装を抱きしめ自分の隊舎に向かって歩き出す。
自然と笑顔になり、歩みが速まる。
見慣れた建物が見える頃には、すっかり駆け足になっていた。





着替えを済ませ、隊首室に向かう。
なんだか視線を感じるが、別に気にせずに歩いていく。
あー、やっぱり涼しい!
これから暑い時期はこういうのにしようかな。
そんなことを考えながら、隊首室をノックする。

「市丸隊長、書類を届けに着ました。」

翅音ちゃんやー!早よ入りvv」

開けてもいないのに、扉が開かれる。
ギンが両手を広げて迎え入れる。
・・・と、ギンの動きが止まる。
いつもなら飛びついてくるのに。
こちらも避ける準備はできていたのに。
不思議に思ってギンを見ると、視線が足に向いていた。

「ちょッ・・・ 翅音ちゃん、それ・・・?」

「ああ、涅副隊長が貸して下さったんです。
 これ、涼しくていいですねえ。これからこういうのにしようかなーなんて「あかん!」」

翅音の言葉を遮り、ギンは 翅音に飛びつく。
しまった、油断した!
そのまま隊首室に抱き込まれる。
ギンの腕の中でもがくが、当然逃れることはできない。
困っていると、ギンの声が聞こえた。

「こんな悩殺的な格好、したらあかんやろ!」

・・・なんだか怒っている?
翅音は首をかしげる。

「いつもよりちょっと短いだけじゃないですか。」

「ちょっとやない!こないに肌見せて・・・あかんわ!」

ギンの腕に力がこもる。
苦しくて、思わずぐえ、と声が漏れる。
それに気付き、ギンは腕を解く。

「ボクの死覇装貸したるから、着替えるんやで?」

「これ、涼しいんですよ・・・。
 男のヒトだって上を脱いでるヒトとかいるじゃないですか。
 それに比べたらこのくらい・・・」

「・・・ 翅音ちゃん、男の肌なん、見たってなんとも思わんやろ?」

「へ?・・・まあ、そうですけど・・・」

突然話が変わったように感じ、 翅音はきょとんとする。
ギンは熱弁をふるい続ける。

「男はな、 翅音ちゃんと違ごて下心のある目で見るんやで!?
 そんなやらしー目に、 翅音ちゃんの肌をさらす様なまね、したらあかん!」

呆然とギンを見つめる。
ギンはしばらく 翅音を見つめ、突然にやりと笑みを浮かべた。

「身を持ってわからしたるvv」

「えっ、ちょっ・・・きゃー!!」

気を抜いていたため、難なく押し倒される。
ギンの手が死覇装にかかる。
逃れようと暴れる 翅音の唇を乱暴にふさぐ。
次第に頬、首筋、鎖骨とギンの唇が下りていく。
はだけた胸元にキスが落とされる。

「・・・ッ」

翅音は顔を覆い、体を震わせる。
体を押さえつけていた力が緩められ、ギンの手が 翅音の頭を撫でた。
覆った手の間からそうっと見ると、嬉しそうなギンの笑顔がそこにあった。

「わかったやろ?着替える?」

口を尖らせて 翅音はうなずく。
ギンは満足そうに何度もうなずき、そっと離れた。
死覇装を一枚取り出すと、 翅音に差し出そうとする。
しかし途中でその手を止めると、すごい速さで近寄る。

「ボクが手伝ったるなvv」

「・・・結構ですっ」

くるっとギンに背を向ける。
乱れた胸元を正すと、キスの後が目に映った。
顔だけ振り向き、ギンを見る。
本気でつまらなそうな顔をしている。
くすっと笑うと、 翅音は、小さくあかんべーをした。








<あとがき>
キリリクのギン夢、短い死覇装を怒られる、です。
なんだか長くなってしまいました。
書く前から、書くのが楽しみでした。
いいですね、短い死覇装vv
考えもしない設定で、とても楽しませてもらいました。
それが伝わるといいのですけど・・・。
そして、少しでもお気に召せば幸いですvv

2005.7.24


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