「市丸隊長!!いい加減仕事して下さい!!」

今日は一体何なんですか!僕がもう我慢出来ませんと言わんばかりに怒鳴りダンッと大きな音

がする程強く叩いて市丸隊長を睨み付けた。

当の本人は、執務机に座ってはいるものの肩肘をついて筆を持ったまま固まっている。

もうかれこれ一時間もこの状態が続いている。身体有っても心此処にあらずとはこの事ですね!?

やっぱり何かあったのですね!?

「市丸隊長!書類が一杯です!」

僕が市丸隊長の目の前で手を振って書類をチラつかせてやっと気が付いたのか目を上げる。

『うっさいなぁ・・・イヅル。放っといて』

そういって市丸隊長が溜息を吐くと漸く一番上にある書類に手を伸ばす。僕だって溜息吐きたい

ですよ・・・

「ちゃんと仕事して下されば僕は何も言いません!」

そう言って僕は席に戻り再び書類と向き合う。途中チラチラと市丸隊長の様子を伺いながら。

一応筆を走らせては居るが何処かフワフワしている・・・

「そんなのじゃ、今日のお月見貴方参加出来ませんよ」

『別にええねん・・・』

そう言って元気なく溜息を吐く市丸隊長に思わず吹き出してしまった。だって仕事なんかよりもよ

っぽど好きなお酒の席、そして他の隊も参加するから女性が好きな市丸隊長はてっきり楽しみに

しているのだと思っていたから。吹き出した僕をみてちょっと嫌そうな顔をしている市丸隊長に

「もしかして(女性と)何かあったのですか?」

僕がニヤニヤ笑いながら尋ねると、どうやら当たってしまったらしく途端に市丸隊長が霊圧を上げ

る。僕はいつも無反応な市丸隊長がこんなに感情的になるのは初めてだと驚きを隠せなかった・・・

 

 

 

Admixture of truth and falsehood

 

 

 

あァ・・・かったるいわぁ。ボクは書類を片付けながら溜息を吐く。

そもそも 翅音ちゃんが悪いんよ・・・何日も現世に行ってボクに構うてくれへんから。

翅音ちゃんは半月程現世の任務にあたっていて二日前に丁度帰ってきた。きっと瀞霊廷に帰って

来て一番にボクに会いに来てくれはったんやろう・・・せやけど・・・ボクは待たれへんかった。

翅音ちゃんがいつもの様に仕事をサボって昼寝をしていたボクの所にやって来た。いつも 翅音

ちゃんだけにはボク、見つかってまうねん・・・ボクを揺すって起こすなり一番に

「ギン・・!その首のキスマークは何!?」

会った瞬間に目聡く見つけて 翅音ちゃんは半ば泣きそうになりながらボクに詰め寄る。

『・・・なんやろうねぇ・・?』

ボクはクツクツと笑って起き上がり、 翅音ちゃんの頭を撫でる。次の瞬間

 

 


パチンッ!

 

 

 

勢い良く 翅音ちゃんの平手打ちが飛んできた。ボクは叩かれたのも気にせず笑みを深くして

『 翅音ちゃん・・?今帰ってきたん?』

ボクは表情を一切変えないまま 翅音ちゃんを見詰める。

「ギン・・・」

ボクの名前を呼んでとうとう目からは大粒の涙が零れ始める。キミの涙も、ボクは好きや・・・綺麗

やから。ボクは手を伸ばし 翅音ちゃんの涙に触れる。

すると 翅音ちゃんは何も言わずに立ち上がって踵を返して立ち去って行った。

それからと言うもの廊下で会うとわざとらしく避けられ、いつもは執務室に遊びに来てくれはるのも

来なくなった。まぁ、其れが当たり前といっちゃ当たり前やし、それで全ては終わりや。

ボクも最初は気にしてなかったつもりやってんけど・・・避けられれば避けられる程・・・なんや気に

なってもうて胸が痛いねん。なんや他の女とはちょっと違うみたいや、 翅音ちゃんは。なんやろね・・・

この気持ちは・・・

ボクはこの気持ちを悟る術を知らん・・・今晩、キミに会うたら分るやろうか?ゆっくり話したら分か

るやろうか・・・そう思いながら手だけ事務的に動かした。

 

 

 

 

 

 


瀞霊廷に戻って、はや二日。あれからギンとは一言も口を利いていない。確かに半月近くも現世

へ任務に赴き一度も会えなかった。でも仕事だったんだから仕方ないじゃないのよ・・・

瀞霊廷に戻り、九番隊に寄るよりも先に。一番先に会いに行ったギンの首筋には赤い華が・・・三

番隊隊長市丸ギンは瀞霊廷でも一、二を争う程のプレイボーイだって嫌と言う程分っていた筈で

あろう・・・長期間放ったらかしにしていたら別の女性と遊んでしまうなんて分かる筈なのに・・・早

くギンの事は忘れてしまった方がいい。辛い思いをするだけなんだから・・・

そう思いながらもついつい後になって目で追ってしまうのは、きっと心の何処かで私だけ特別なん

じゃないかなって思っていたからであろうか・・・自信が、有った。誰よりもギンを早く探す事が出来

る。誰もが見つける事の出来ない(吉良副隊長は別だけど)市丸隊長探し、私にとっては容易いも

のであった。たったそれだけなんだけど・・・いつも私に見つけられたギンはとても優しい笑顔で

『しゃぁないなぁ・・・ほな今日は大人しゅう帰ろか』

そう言って起き上がって私に口付けると手を繋いで一緒に戻ってくれていたから・・・その笑顔に裏

はなく、私だけが見る事の出来る。そんな特別な存在だと思っていたから・・・

其処まで考えるとまた涙が浮かんできた。喩え浮気されても私はギンの事が好きなんだ・・・この

気持ちだけは誤魔化せない。情けないけど好きなんだから仕方が無い・・・

今日は護廷十三廷全員参加(仕事が忙しい隊員は勿論参加出来ないけど)のイベントのお月見

・・・当然ギンも居るだろう。普段の私ならば楽しみにしているんだけど、今日に限ってあまりそうは

思わなかった。

「 風花さん・・・そこにある紙皿取ってくれない?」

「ああ、いいですよ。どうぞ♪」

及ばずながら私も手伝い始める。夕日も西に落ちていき段々空には夜の帳が降りてくる。私は料理

を運びながら段々集まりだした人の中にギンの姿を発見してトクンと胸が高鳴る。

ギンは私に目もくれず吉良副隊長と一緒に席に座る。段々と回りにお酌をしに女性死神達が集まり

始めて賑わい始める。

「 翅音ちゃ〜ん♪こっち来てお酌してよぉ・・・」

京楽隊長が手招きして呼んで私は我に戻り

「は〜い♪もう既に大分お酒入ってますね・・?」

「いやぁ・・・そんな事ないよ。昼間は真面目に仕事してたからねぇ」

「何処が真面目に仕事なさっていたのですか!?」

突然背後から声が聞こえて振り向くと伊勢副隊長が物凄い怖い顔をして京楽隊長を睨みつけてい

た。

「七緒ちゃ〜ん・・・そりゃないよ・・・」

自然と頬が緩み三人で談笑していると遠くからじっと見詰める気配に気が付く。その気配だけで誰だ

か分るが、敢えて後ろを振り向かずに必死にやり過ごす。その時に東仙隊長の姿が見えて私は席

を立ち上がる。

「 翅音さん・・・また今度ね」

伊勢副隊長が京楽隊長からお酒を取り上げながらニッコリと笑って私に手を振る。

「それじゃ、隊長の所に行ってきます」

私は会釈して檜佐木副隊長と東仙隊長の元に歩み寄る。その時にギンの方をチラリと見ると相変わ

らず女性隊員に囲まれてチヤホヤされている。溜息を吐く気力すら起こらないまま無視して東仙隊

長の元へ行きお酌をすると

「今日は綺麗な月が見えてるといいんだけど・・・どうだい? 風花さん」

隊長は目が見えないから今晩の月が見れずに残念そうだ・・・

「隊長、今日はいい天気ですからとっても綺麗ですよ。」

私がそう言うと嬉しそうに月が在る方を見上げて

「良かった・・・月は見えないけど、僕はこの雰囲気を楽しむ事にするよ」

そう言って暫く無言のまま二人で月を見上げる。

すると横に居る檜佐木副隊長が私の肩をツンツン突く。私が副隊長の方に振り向くとそっと耳打ちされる。

「市丸隊長の所に行かなくていいのか?さっきから刺々しい視線を感じるんだが・・・」

心配そうに私を見下ろす副隊長にニッコリと笑いかけ

「自分の隊に居て一体何処が悪いんですか。気になさらずお月見を楽しんで下さい」

私がそう言いギンの方に目を向けると、目が合ってしまい勢い良く逸らしてしまった。

そんな気配に気が付いたのか東仙隊長がクスクス笑いながら私を見下ろし、

「今日の君達は何だかぎこちないんだね・・・」

「なっ・・・私と市丸隊長は、そんな・・・」

「何もねぇ訳ないだろ?だってこんなに・・・もしかして喧嘩したのか?それも市丸隊長が浮気とか?」

ズバリそうです・・・副隊長はニヤニヤしながら私に

「市丸隊長と付き合うんだったら其れ位我慢しろ」

「ひ、檜佐木副隊長・・・酷い(涙)」

「ははは、冗談だ・・・早く仲直りしろよ」

「すまないね・・・長期間現世への任務に行ってたからだろう?」

東仙隊長が申し訳無さそうに言う。私は東仙隊長には見えないのを忘れて首を横に振る。

「そ、そんな・・・仕事なのですから仕方ありませんよ。」

「今度から考慮するよ。僕も市丸隊長に不機嫌になられるのは嫌だからね」

東仙隊長にまで気遣われ、嗚呼!何時の間にこんなに知られてるのだろう・・・恥ずかしいし、少し早いけど

これ以上居ても意味が無いと私は部屋に戻る事にした。

 

 

 

 

 

 


翅音ちゃん・・・ボクがずっと見てても全然こっちに来てくれはらんかったなぁ・・・お月見が終わりボク

は部屋に戻る。ボクは寝室で取り敢えず今日は眠ろうと目を閉じる。ええ天気やった所為か月明かり

が眩しい。いくら月の光を遮ろうと部屋を閉め切ってみてもやわらかな満月の銀色の光はちょっとし

た隙間からでも灯りを消した部屋へと振りそそいで来て明るい。

なんや寝られへんわ・・・そんな中ふと懐かしく感じるのは 翅音ちゃんの気配、そしてあの時触れた

涙の感触、いつも居るはずの気配がない言い知れぬ不安に急にかきたてられ。

やっぱりキミに会わんとこの気持ちの正体は見つかりそうに無くて・・・

ボクはらしくないなと溜息を吐きつつ障子を開けて外に出る。

行き先は 翅音ちゃんの部屋・・・

翅音ちゃんの部屋の前につくと灯りが灯っておりまだ起きているのが分る。トントンとノックをすると中

から声が聞こえる。

「・・・帰って下さい・・・」

『嫌や・・・お邪魔するで』

ボクは半ば強引に 翅音ちゃんの部屋に上がりこむ。そう広くは無い 翅音ちゃんの部屋は綺麗に整理

整頓されており机の上には一本の蝋燭が細々と灯っている。机の前に座っている 翅音ちゃんが本を

開いているから、読書してたんやろう。

「・・・一体何の用なのです・・?」

翅音ちゃんはボクを観ようともせず冷たくあしらう。

「貴方とは・・・もう・・・」

ボクが後ろから抱きしめた為、 翅音ちゃんの声がそこで途切れる。

『なんで震えてるん・・?』

翅音ちゃんはカタカタ震えている。横から顔を覗き込んだらうっすらと涙が浮かんでいる。

・・・ボクは・・・ボクのこの気持ちは、キミにとって迷惑やろうか・・・

確かにやり過ぎたわ・・・そやけどキミへの、本当の気持ちに気付く事は出来た。それはボクにとって

も、そして 翅音ちゃんにとっても大きな前進にならへんかなぁ・・・

そう思うのはボクだけやろうか・・・都合良過ぎるやろうか。このまま元に戻ってもまたボクはキミを傷

つけてしまうやろうか・・・

それ以前に 翅音ちゃんは、もうボクの事なんか忘れてもうたんやろうか・・・ボクの胸に伝わるこの震

えは。ボクが怖いんやなくて、もしかしたらボクん事まだ好きやって・・・そう自惚れてもええやろうか。

こんな気持ち、 翅音ちゃんには恥ずかしゅうて全部は伝えられへんわ・・・

「市丸隊長は・・・結局誰も好きじゃないんでしょう?」

震えた声で 翅音ちゃんはそう言う・・・ボクは黙って 翅音ちゃんの声に耳を澄ます。

「きっと・・・貴方の先には誰も映ってないのでしょう・・?」

『ボクの事全部信用してやなんてゆわへんよ・・・ただ、今回の事でよう分った事が一つだけあるねん』

ボクがそう言うと顔をこっちに向けて 翅音ちゃんは半信半疑で首を傾げる。

『ボクにはキミが必要やって事・・?』

そう言ってボクはクツクツと笑い 翅音ちゃんに口付ける。ボクを引き剥がした 翅音ちゃんがボクを睨み

つける。堪えていた涙がとうとう頬を伝う。ボクが涙を吸い取るように口付けると

「市丸隊長が好きです・・・ですが、もうあんな思いはしたくありません・・!」

チクリと胸の何処かに棘が刺さったような気がして痛い。せやからといって、此れからもうボクは浮気

なんかせぇへんなんて今此処でゆうても全く信用される訳ないやろし・・・ 翅音ちゃんがボクと元に戻

って辛い思いをしはるんやったら、ボクが諦めんと・・・ボクが今キミに言える事は此れだけ、此れだ

けは紛れもない真実や・・・

『好きやで・・・ 翅音ちゃん・・・』

そう言って 翅音ちゃんを抱きしめる力を緩めて解放して、立ち上がり部屋から出ようと踵を返した。

障子に手を掛けた時に後ろからぎゅっと抱きしめられる。

「もうあんな思いはしたくないのに、それでもギンが好きよ・・・」

『同じ事繰り返すかも知れへんのに・・?其れでもボクがええんか?』

ボクの背中に抱きついたまま頷く 翅音ちゃんがめっちゃ愛おしい・・・ボクは振り返り 翅音ちゃんの唇

を啄ばむ様に口付ける。

『好きやで・・・』

今 翅音ちゃんを一番安心させる言葉は此れだけしか分らへんから・・・

ボクが今此れからは絶対 翅音ちゃんだけしか好きにならへんなんてゆうても、 翅音ちゃん絶対不安

な気持ちは消えへんやろ?そやったら嫌でも消えるようにボクがこれから変わってあげなあかんな・・・

暫く二人口付けあってからボクは再び部屋を出ようとした。

『今日はボク帰るけど・・?』

「・・・もう遅いし・・・今日は此処で泊まって行ったら・・?」

そう言って顔を真っ赤にして俯く 翅音ちゃんをクツクツ笑って見下ろして、ボクは羽織をそっと脱ぎ捨て

翅音ちゃんをそっと抱きしめた。

 


 


あとがき


「二十四番花信風」風花翅音様と相互リンク記念お礼押し付け夢です。(当サイトからはTOP→友達の輪

→素敵鰤サイト様へ行くと飛べます)此方は翅音様のみお持ち帰り頂けます。どうぞ返品可ですので、

笑って許して頂戴・・!(土下座)遅くなっちゃって申し訳ないです。

Admixture of truth and falsehood=真実と偽りの混ぜ合わせ  題名が長くなりました!(爆)

黒いギンを目指して書いていたのですが・・・いつも以上に白い市丸たいちょになってしまいました(笑)

きっと私には黒いギンは書けないのだと思います。うん(爆)

市丸たいちょフワフワしてるような気がしますv捕まえたようで捕まえていないと言うか・・・

だからちょっと目を離すと浮気されそうです(笑)

愛を知らない男、市丸ギン。しかしその瞳の奥にある緋色の瞳は情熱的に燃えあがっている・・・

そやったらええね(爆)

それではここまで御清聴頂き有り難う御座いました。   05/09/16

                 ☆ Miharu Kurusu presents ☆

 

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