「暑い・・・おなかすいた・・・ああ、もうダメ・・・」

文句を言いながら 翅音は机に倒れ伏す。
冬獅郎が呆れ顔で見つめる。

「もう少しで昼飯だろ?それまでがんばれよ。」

「はいぃー・・・でももう元気が残り少ないですよう。」

必死で顔を上げながら、冬獅郎の言葉に応える。
暑さと空腹でヒドイ顔になっている。
冬獅郎は思わず噴出す。

「ああっヒドイです!笑いましたね!?」

「くくく・・・ワ、ワリィ・・・でも、お前、その顔・・・!」

笑いを噛み殺す。
翅音は頬を膨らませ、すねてそっぽを向く。
どうにか笑いを収めた冬獅郎は、苦笑いをしながら近寄る。

「悪かった。・・・昼飯おごってやるから、機嫌直せよ。」

「はい!」

さっきまでの顔が嘘のように、 翅音の顔が輝く。
現金なヤツ・・・。
翅音に見つからないよう、冬獅郎はこっそり笑った。






「日番谷隊長ー!お昼ですよ!!」

「・・・ずいぶん元気が残ってるじゃねーか。」

「あー・・・食べないともうダメですぅ・・・」

「わかったわかった。行くぞ。」

ため息をつきながら歩く冬獅郎と並んで歩く。
ちらりと 翅音の顔を覗き見る。
満面の笑み。
冬獅郎も笑顔になる。
おごりのせいじゃなくて、俺と一緒だから嬉しい・・・だといいんだがな。
こっそりため息。
翅音は冬獅郎の思考に気付くはずもなく、浮かれて追い越しかねない速さで歩いている。
そんな 翅音を冬獅郎が制止する。

「どこまで行く気だ。入るぞ。」

「ここですか?・・・うなぎ?」

きょろきょろしながら店に入る。
近寄ってきた店員に、冬獅郎は二つ、とだけ言って席に着く。
翅音も慌てて腰を下ろす。

「よく来るんですか?」

「ん、まあな。」

他愛のない話をしている内に、うな重が二つ運ばれてきた。
目を輝かせ、冬獅郎を見つめる。

「い、いいんですか!?こんな・・・」

「今日は土用の丑の日だろ。」

満足そうに笑って言った冬獅郎に、店員が声をかけた。

「これで精力つけてがんばってくださいね。」

意味深な笑みを浮かべ、頭を下げて下がっていった。
唖然と見送っていた二人だったが、一瞬の後に顔が真っ赤になる。

精力つけてがんばるって・・・何を!?

顔を見合わせると、ぎこちない笑みを浮かべる。

「し、仕事ですよね、そうですよね!?」

「あっ当たり前だろ!他に何があるってんだよ・・・」

「何って・・・」

妙な沈黙。
あのヤロー、人の気も知らないで・・・!
それができりゃー、俺だって・・・ 翅音と・・・っ
心の中で余計なことを言い残した店員を睨みつける。
そんな冬獅郎の目の前に箸が差し出された。

「さっ・・・冷めないうちに、いただきましょう、よ。」

「そう、だな。」

箸を受け取り、口に運ぶ。
味わうように噛み締め、 翅音は目を見開いた。

「うわっ、おいしいvv
 やわらかくて、溶けるみたい!」

「だろ?俺が毎年通うくらいだからな。」

無邪気に喜ぶ 翅音に、冬獅郎は満足そうに笑う。
先ほどの不自然な空気がかき消される。
翅音の、力だ。

そうだ。
翅音のこういう素直で無邪気なところに、俺は惹かれたんだ。
いつも笑顔でいて欲しくて、そればかり考えて。
今は、それで十分。

もう一度 翅音に目を向ける。
すると、通りかかった先ほどの店員と目が合った。
店員がにやりと笑う。

今は、いいんだ。
・・・今は、な・・・。







<あとがき>
こんなのシロちゃんじゃない!
書いていて楽しくはあったんですが・・・誰?(苦笑)
さて、今年の土用の丑の日は7月28日だそうですよ。
ウナギを食べて、夏を乗り切ってください。
・・・私はウナギ、苦手なんですけどね。
それでは読んでくださって、ありがとうございました。

2005.7.26


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