貴方だけを夢見て
貴方だけを追い駆ける……
〜rainbow chaser〜
十番隊第三席を預かる女傑である彼女−−−−は、自隊の隊長である日番谷に想いを寄せていた。
そして今日もまた、日番谷の姿を見て、うっとりとため息を零す。
日番谷隊長、今日も格好良いです……
半ばトリップしながら日番谷の事を見詰める。
純粋で直向き過ぎる程のその想いは、尊敬の念を通り越していた。
「……。」
「あぁ、日番谷隊長の声だ……。こんな風に名前呼ばれたいなぁ……」
「!!」
「はいぃっ!?」
思わず日番谷の声に聞き惚れていたは、叫ばれるまで自分が呼ばれていた事に気付かなかった。
「な、何でしょう?」
「ぼけっとしてねぇで、さっさと仕事しろ!!」
「すみません……」
現実なんて、こんなもので。
今日も今日とては夢を追う。
「日番谷隊長に『』って呼ばれました♪」
「アンタ、それってただ単に怒られただけじゃないの……」
「名前を覚えててもらえただけで幸せですから〜」
「本当に隊長の事、好きよね」
「はい!」
「どこがいいんだか」
元気良く返事をしたに対し、松本は半ば呆れながら呟いた。
はそんな松本の様子を気にした風でもなく、至極御機嫌だった。
「副隊長も恋をすれば分かりますよ」
「面倒だわ。それにアタシは男に振り回されるのはゴメンよ」
「別に振り回されてないですよ?そもそも眼中にないみたいですし」
「……そう」
思いも寄らないの発言に、松本は返答に窮した。
それと同時に、少しだけが可哀想になる。
これ程想っているのに、その想いが叶わないなんて。
一体どれ程辛いのだろうか……。
だが、日番谷の普段の様子を見ていると、まったく気がないだなんて思えない。
極稀にだが、眩しそうにの姿を見ている時があるのだ。
そこまで考えて、松本は悪戯っぽく笑って見せた。
「ねぇ、。アンタ隊長の想いを知りたいとは思わない?」
「想いですか?そりゃ知りたいですけど、雛森副隊長を想っているっていうオチなのは分かってますよ……?」
「じゃあ、試しにこれでも飲んでみなさい」
そう言って、松本は怪しげな液体を差し出した。
は怪訝そうな顔でその小瓶を見遣る。
「さぁ、ぐいっといきなさい」
「……身体壊したら、恨みますからね」
一気に中身を呷ったは、そのままソファへと倒れ込んだ。
それを確認した松本は、くすっと笑みを零して執務室を後にした。
しばらくして、日番谷が任務から戻って来た。
執務室に入ってすぐ、ソファに横たわっているの姿が目に入る。
日番谷はため息を一つ吐いた後。
思いっきり怒鳴った。
「、起きろ!!」
「…………」
身動き一つしないの様子を見て、日番谷は訝しげに眉を寄せる。
何かがおかしい。
「……?」
「…………」
呼び掛けながらその華奢な身体を揺すってみても、はまったく反応を返さない。
まるで……。
まるで、何だって?
頭の中を過ぎった最悪の事態ではない事を確認するため、日番谷はの魄動を診た。
だが、それは日番谷の不安を裏付けるものでしかなかった。
の魄動は、止まっていた。
「嘘、だろ……?」
「隊長、どうかしましたか?」
全身から血の気が引いていくのが分かった瞬間。
松本に声を掛けられた。
日番谷ははっと我に返り、の身体を抱き上げた。
「話は後でする。ついてこい!」
それだけ言うと、日番谷は瞬歩で駆け出した。
松本は訳が分からないまま、とりあえず後を追った。
着いた先は、四番隊だった。
「卯ノ花を呼んで来い!急げ!!」
着いて早々、日番谷は側にいた隊士に向かってそう怒鳴った。
可哀想なその隊士は、やっとの事で返事を返して走り去って行った。
「隊長、どうしたんですか?に何か「コイツの魄動を見ろ」
松本の言葉を途中で遮り、吐き捨てるようにそう言った。
やがて日番谷の意図した事を知り、松本は青ざめた。
「日番谷隊長、どうなされました?」
「卯ノ花、コイツを診てやってくれ。さっき執務室で見付けたんだ……」
「……こちらへ」
ただ事ではないと分かったのか、卯ノ花は日番谷を奥へと招いた。
取り残される形になった松本は一人、胸元から出した小瓶を見詰めた。
「何てモノを寄越したのよ、ギン……」
その呟きを聞く者は、誰もいなかった。
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